SAKANAQUARIUM 光 ONLINEについての所感

2020年8月。

暑さがすごいですね。皆さまはお元気ですか?

外回りの仕事をしている私はマスクと猛暑のダブルパンチで、それはもう熾烈を極めています、生きることが。強すぎる日差しが頭痛を誘発するのか、直射日光を短時間でも浴びると頭がかち割れそうな痛みに襲われ日常生活に支障を来してます。もう外出時はこの酷暑の中マスク、サングラス、帽子、長そで、みたいな重装備で外に出ざるをえない。変質者かな?ってなるけどしょうがない、生きるためです。

コロナで夏のイベントも軒並み中止になってしまってますよね。花火大会も、フェスも、キャンプも海も、ぜーんぶお預け。残念ですね。

私も毎年夏には実家に帰省していたのですが今年はそうもいかず、自宅で延々と何かを見たり読んだりとコンテンツ消費型の生活を送っています。

もっぱら消費専門で、自らは何も生み出すことのない、いかにも煮こごった資本主義によって生み出された創造を忘れた怠惰な人間的生活をしている自分に少しだけ罪悪感があります。嘘です、この生活も嫌いじゃない、一生コンテンツの消費だけして生きていたい。

 

そんな例年に比べると楽しみの少ない夏ですが、ひとつだけ楽しみなことがありました。サカナクションのオンラインライブ、「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」です。

 

サカナクション、みなさんはお好きですか?

 

私は数年前、「バッハの旋律を夜に聞いたせいです」という楽曲を聞いてしびれました。この曲なんね!!!!!!?!????!?と、驚きたまげてすぐにググって、すでに大活躍のサカナクションに出会いました。

そこからサカナクションをディグりはじめ、いろんな楽曲を聞いていく内にサカナクション特有の不思議な音に惹き込まれ、あっという間に好きになってしまったのでした。

ダンスミュージック×ロック、フォーク、テクノ等の不思議な掛け合わせがとても耳に心地よく、また、歌詞も嫌味なくつるりとした質感を持ちながらもぎょっとするほどウェットでもあり、ミクロでもマクロでもあり、とにかくえも言われぬ不思議感。不可思議サウンドと調和された美しくもどこか引っかかる日本語。そんな唯一無二の雰囲気を醸成しているのです。

好き。

 

周りにも多いんですよね、サカナクション好きっていう人。

個人的にはすごく幅広い層に人気な印象です。

というのも、私は学生時代クラシックピアノサークル的なゆるいものに参加していたのですが、そこでできた仲間とは今でも仲良くしてもらっており、たまに集まると音楽談義に花が咲くこともしばしばです。ただまぁ個性的なメンツなため音楽の嗜好はバラバラで誰もかぶってない。(と思う)

コンサートで弾く曲も、バロック音楽からゲーム音楽まで、幅広いジャンルの中でそれぞれが縄張りを持っていた。

このメンバーで行くカラオケはレパートリーのレンジが広すぎてさばききれん。

そしてうまくもある。

そんな中でも、サカナクションは「いいよね」と支持を集める極めて珍しい存在である。私たちの最大公約数的なポジションかもしれない。

いろんな人に刺さる要素を持ったバンドなのだろうと感じています。

 

あとね、バンドのフロントマンである山口一郎氏がね、傑物なんですよね。

コロナ禍でいろんなアーティストがインスタライブするようになりましたが、山口氏のライブがいつも秀逸なんです。

内容としては音楽のパフォーマンスというよりかはお題を決めて、深夜対談的なノリでランダムにリスナーとトークすることが多いのですが、そこで繰り広げられるリスナーとのトークは仕込んでるんじゃ?とすら感じる鋭いオチがあったりして、第七世代のネタ見てるより面白いぐらいです。

先日のインスタライブでは、地球に来る前の記憶を思い出してしまった(?)サイキック体験をしたリスナーと繋がり、特殊な能力ゆえの生きづらさを抱えたマイノリティの苦しみに対して、人のために生きられると楽になる、感謝をしながら今を生きることで結果として自らも生きやすくなる、という涙の結論をリスナーと共に導き出していた。

ほかにもコンテンツ制作の裏話や、あれは赤字、あれは黒字、等の金銭の話などを明け透けに話すこともあり、トップアーティストにも関わらず常にファンや視聴者との距離を大事に誠実に音楽に向き合う姿勢を垣間見れる。

 

そんな山口氏が、2月のコロナショック以降中止になったツアーぶりにライブをするというのです、約半年ぶり!

現在の音楽業界の落ち込みっぷり、いつ生活が立ち行かなくなるかという窮状も山口氏はライブで言及していました。

本当、どの業界も計り知れない影響を受けているとは思うんですけど、今回エンタメの受けた打撃はすさまじいと思います。

普段その恩恵を享受している身としては、心苦しいものがあります。

音楽を筆頭にる、エンタメに幾度となく助けられてきたにも関わらず、今回のコロナ禍では生きるために必要不可欠なものではないと、切って捨ててしまわれてしまったに等しい扱いがありました。

芸術や音楽は、「不要不急」だという論調、ありましたよね。

でも、果たしてそうだろうか。

音楽や芸術が廃れた世界で、自分は幸せに生きて行けるかしら・・・

そのようなことを考えてしまいました。なんせ、自分NoMusicNoLifeなんで。

 

とまぁ、好きなアーティストが引退したらこっちとしても困るじゃないですか。

だから、なんとか応援できたらいいな、と思っているわけです。

そしたらオンラインライブですよ。

1公演、4,000円と強気な価格設定。最初は高!!!と思いました。

だって、時代の寵児である髭男ですら2,200円ですよ?約2倍ですよ。

4,000円。自信あるのかな…

家で無料のyoutube見るのと何が違うのかな。

とか思ってました。

そしたら、山口氏、こんな感じのことを言ってたんです。

 

我々は、こんなご時世だからと、ファンに甘えてこんな価格にしたんじゃない。

ファンに助けてほしくて、ライブするんじゃない。

オンラインライブだからと妥協はしない。

4,000円払って見る価値のあるものを創る。

だから安心してほしい。最高の音楽体験を約束する、と。

 

オンラインでしかできない表現、新しい音楽へのチャレンジ。

ライブだけれども、イヤホン、ヘッドホン推奨。

3Dサウンドシステムを使った、新しい音楽体験。

3Dサウンドシステムとやらがどんなものなのかも、事前にテスト配信があった。

イヤホンで聞くと、音が360度、そして真上や真下から聞こえる摩訶不思議な聞こえ方するんですよ。イヤホンで聞いてるのに、あ、上から聞こえる。後ろから鳴ってる。下にベースがいて真ん中にギターがいる。その上にボーカルだ、みたいな感覚があるんですよ!

そりゃ、ヘッドホンやイヤホン推奨になるわけですね。

私はSONYのイヤホンのアレあるんで、もうアレでしたよ。

もう、チケットぽちですよ。

しかも、サカナクションはこのコロナショックにより収入が激減した音楽関係者へのドネーションを目的としたBru-rayBOXも発売したり、完全に業界復興のために立ち上がりし勇者なわけですよ。

モブキャラでもいいからいつか伝説になるその冒険、参加したいじゃないですか。

 自分も楽しみながら、支援することができる。見事なwin-winいえーい

 

そして当日。

外出先から急いで帰ってきて、まずは50インチの大画面テレビでその雄姿を拝むことにしました。

もうね。

言語化が難しいです。

本当に、オンラインライブというまだ未開拓のこのジャンルで、ここまでの完成度で持ってくるものなのかと、若干引きましたね。

正直、MVを見てるような、そんな感覚を覚えました。

MVとの融合というコンセプトイメージもあったみたいなので、それは成功してるなと思いました。

特に、「ミュージック」という楽曲の演出が神がかりすぎて鳥肌モノでした。

サカナクションお決まりの5人でMac開いて立ってるやつ。

そこにバーチャルとリアルの融合みたいな演出があって、ほんとこれこそ2,5次元なんじゃないか?って感じでしたね。目の前で演奏されてたらその感覚は味わえなかったと思う。MCもほぼ無く、圧倒的な演出力で、通常のライブとはまた違う世界観が出来ててライブそのものがひとつの作品になってました。

そして普通に演奏のクオリティがやばい。

これ生演奏ですか?今弾いてます?って感じでした。(弾いてる)

アーカイブはイヤホンで楽しみました。

すごいわ、としか感想が出てこない。

これは確かに新しい音楽の形でした。

 

個人的には本当に良い体験をさせてもらいました。

音楽の歴史の1ページに立ち会えた気分さえあります。

 

オンラインライブってどうなの?意味あるの?

っていう声もあると思います。

でもそれはその公演によるものかもしれません。

単純に、画面の向こうで生演奏してるだけでは、その価値を感じられないのも事実かもしれません。

どのクオリティでオンラインライブをやるのか。

サカナクションが今回のライブでハードル上げてしまったのは間違いないと思われます。

ものすごく予算かけたらしいし。

4万人動員できなければ赤字だったそうです。(結果6万人)

先日のサザンの無観客ライブ配信3,600円が18万枚売れるという破格の利益を出したことを考えると、大健闘ではないでしょうか。

 

最近、今度行ってみようと話していた飲食店がことごとく潰れていることに気づきました。老舗のフレンチも、人気の鉄板焼きも、素敵な純喫茶も、チェーンの居酒屋も。

いつか行こうなんて呑気に構えていたことを後悔した。

今度行こうの今度が、いつになるかわからない中で、お店を開けてお客さんを待っていることができるお店なんて、ないのだ。

いつも素晴らしい音楽を生み出してくれるミュージシャンや音楽家たちが、生活苦に音楽をやめたりしなくて済むように、いちオーディエンスの自分は細々と応援するのみであります。

 

常に新しい音楽の可能性を示唆してきたサカナクション

今後もできる限り応援していきたい。

感動をありがとうございました。